店長はつらいって聞くけど・・・本当の所どうなんですか?
そんな疑問に、小売業界で20年以上勤務し、現役店長をしているsavoがお答えします。
店長の仕事は何故つらいのか?
現実、店長の仕事は、つらいことが沢山あります。以下に見ていきましょう。
クレームや事故がいつ発生するか分からない
店長は、店の最高責任者です。よって店のことは全てにおいて責任を負っています。店を運営していると、日々様々なことが起こります。
クレームや事故が発生すると、店長か店長代理が対応することが多いです。営業時間中であればまだ良いのですが、営業時間外に地震や火災が発生したり、施設の故障が発生したり、窃盗被害にあったりということもあります。この場合でも店長は責任者ですから、真っ先に現場に向かわなければなりません。一定規模以上の小売店は警備会社を入れている所が多いのですが、それでも店長は全てにおいての対応が求められます。
労働時間が長い
店長になると、売上や利益を上げることが売場担当以上に求められます。いわゆる経営視点で、どのように数値改善をさせるのか、常に戦略を持って業務を行わなければなりません。
但し、立地や与件等の環境が良く、スタッフが充実している店の店長であれば、自分で時間をコントロールすることも可能ですが、売上が厳しかったり、スタッフの数が少なかったりすることもあります。その場合は、店のオペレーションを回す為に、自らが長時間働いてカバーしなければならないことが出てきます。
また、店長になると管理職手当のみで残業代が支払われなくなるという会社もあります。
これは、その会社において、店長を管理監督者として就業規則で定めているかによります。管理監督者であれば、労働基準法に定められている1日8時間、1週間40時間という労働時間の上限が適用されず、また36協定の時間外労働の規制も受けない為、労働時間や残業時間の制限がありません。
本部からのプレッシャーが半端ない
店長は店ではトップですが、全ての権限を有しているわけではありません。限られた権限の中で、数値業績を上げなければならないのです。業績が悪くなると店長の責任となります。
また、本部への業務報告もしなければなりません。このように店の代表として数値責任や本部との連携をとる必要があります。会社にとっては店の営業数値の合計値が会社全体の数値になる為、店へのプレッシャーをどんどんかけてきます。店長はそれに耐えて、店の舵取りをする必要があります。
店内の人間関係をまとめるのが大変
小売業は人によって成り立っています。いわゆる労働集約型産業です。また、パート・アルバイトの比率が高いことでも知られています。幅広い年代の人が働いている職場となります。更にパートの中でも、仕事にやりがいと持ってバリバリ働きたい人から、とりあえず稼げればいい人まで、仕事に対する意識に大きな格差があります。様々な価値観を持った人が同じ職場で働いている為、人間関係でも上手くいかなくなることが出てきます。
店長としては、店舗スタッフのモチベーションを上げて、チームワーク良く仕事を進めることが出来るようにしたいのですが、これがなかなか大変です。
悪口や陰口を言われる
店舗では多くのスタッフが働いていますが、皆それぞれにストレスを抱えています。そのはけ口がどこに行くか?そうです、店長です。店長は店舗スタッフからすると一番目立つ存在であり、一挙手一投足を見られているといっても過言ではありません。人望があって信頼されている店長であれば、良い陰口になるかもしれませんが、それでも「話のネタ」にされることは覚悟しておきましょう。
これは売場責任者も同様です。皆、上司のことは話のネタに事欠かないですよね。そうやってスタッフが共通の話題を持って親交を深めてもらえれば嬉しいことだ・・・と思えるような、度量の深さが必要かもしれません。
店内で相談出来る人がいない
店長はあらゆる場面で決断を迫られます。その際、軽い内容であれば、周囲のスタッフに意見を求めることもしますが、重たい内容については、店内では相談出来ないことが多々あります。
例えば、店長は会社の方針を受けて、店舗スタッフの負担を強いるような厳しいことを指示せざるを得ない事もあります。このような時は、店長はスタッフのモチベーションを下げずに任務を遂行するために、どのように伝えるべきか悩みます。
そんな時には、他店の店長やエリアマネジャー、本部関係各所に相談したりするのですが、店内で相談できる人がいないのは「店長は孤独」と言われる所以です。
店長職は割に合わない仕事なのか?
ここまで見てきて、店長ってつらいんだなぁ。やりたいと思わない・・・と思ったあなた!確かにつらい所も多いのですが、それ以上にやってて良かったと思えることもあるのです。
やりがいのある仕事ではある
店長は一国一城の主です。ヒト・モノ・カネを使って店の利益を如何に最大化するか?お客様にご満足いただけるか?を考えて業務を行います。店の大小はあれど、経営に必要な業務・知識が自然と身につきます。
仕事を通じてスタッフの成長を感じられたり、喜びを分かち合えたり出来ること、そこに影響力を持てることも店長としてのやりがいであると思います。責任も重いけど、その分、達成した時の充実感は大きくなります。
また、自分で取り組んだことが、上手くいった時もダメだった時も、売上数値やお客様からの評判として、ちゃんと結果として表れることも、やりがいに繋がっていると思います。
実力があれば効率よく仕事が出来る
店長は労働時間が長くなりがち、という話をしました。確かに、そうなりがちではあるのですが、上手くやっている人も多数います。
例えば、人員が少なすぎて店の運営が上手く回らないのであれば、本部に掛け合って人員を増やしたり、採用コストをかけて人員体制を整えるなど、まずは体制固めをしています。また、パート・アルバイトさんとのコミュニケーションを上手にとって、シフトに偏りがでないように調整したり、無駄な業務を排除したりして、効率よく仕事ができる環境を整えています。
一番大変なのが、ダメな店長の下で働いているスタッフです。店長は一定の権限があるので、自分次第で働き方もいくらかは調整できます。
人間としての成長に繋がる
店長に必要な要素は、数値管理能力やマネジメントスキル、リーダーシップなど、様々ありますが、根本にあるのは「人間力」です。
人間としての魅力がある人は、スタッフからも信頼され、結果業績も向上することが多いです。どんなに実務能力が高くても、周りから信頼されない人は店長として成功を収めることは出来ないでしょう。では、人間力の高い人とはどんな人でしょう?
- 誠実で嘘をつかない人
- 周囲の人に対して愛情を注げる人
- 明るく元気な人
ざっくり言うと上記のような人です。もともと素質のある人もいますが、店長職を通して、自ら学び、意識をすることで、成長することも出来ます。
補足:人間関係の構築が苦手な人は店長に向いていない
店長は、経営者としての視点も重要ですが、それ以上に現場のリーダーとして、モチベーターである必要があります。小売業という職業柄、「人」に関するマネジメントが非常に重要な業務となります。
人間関係の構築が苦手な人が店長になると、精神的に大きなストレスを常に抱えることになります。売場担当や売場責任者、またかなり小規模な店の店長であれば、ある程度は個人の力量で結果を出すことが出来ますが、一定規模以上の店長になると、自分の力だけではどうにもなりません。「人」の力を如何に引き出すかが本当に重要になります。
「人」との関わりにストレスを感じてしまう人は、店長には向いていません。頑張ればいくらかは出来ると思いますが、心身をすり減らすだけです。仮に売場担当として優秀だから店長にどうだ?と打診されても、慎重に考えた方が良いでしょう。
まとめ
どんな仕事も責任を伴ってくると、それに応じて大変なことも増えてきます。店長職ももちろん辛いことは沢山ありますが、それでも前向きに頑張れるかどうかは「店の仕事」や「人と関わる仕事」が好きかどうかだと思います。大変そうだけれども、やりがいもありそうだなぁと思った人は、是非店長目指して頑張ってみてください。
今回は以上です。